メメント

両手いっぱいの好きなものについて

2022-01-01から1年間の記事一覧

THE BACK HORN 「鏡」|ありふれた希望について

「世界を撃て」、「フロイデ」、「覚醒」、「さざめくハイウェイ」という具合に、ものすごいエネルギーを放つ怒涛の曲順。どの曲も5分以内に収められているとは思えないくらいに濃密な世界が繰り広げられていて、圧巻の一言である。 もちろん、こうした勢い…

THE BACK HORN「さざめくハイウェイ」|雑踏のなかに漂う緊張感

なんだかこの曲、すごいマニアックじゃないですか。マニアックヘブンが近づいている時節柄だからそう感じたのかもしれないけれど。 たぶん、どんなライブであっても「さざめくハイウェイ」が差し挟まれたなら、「そうきたか…」と唖然とし、意表を突かれると…

【2022年】本当に買ってよかったもの記録

個人的にあまりにも疾風怒涛の2022年がもうすぐ終わる。身の回り品を整理しては購入し、物欲に呑まれながら生活するのが常である。が、徐々に吟味できるようになりつつあるような気がしている。 できるだけ長く使えるものを大切にずっと使いたい、という気持…

THE BACK HORN「覚醒」|痛みを分かち合ったこと

「覚醒」はTHE BACK HORNの17番目のシングルである。この「覚醒」という曲を皮切りに「裸足の夜明け」は開幕した。初めて行くライブの1曲目というのはやけに鮮明に記憶に遺る。それが大好きなバンドのライブであれば、なおのこと強烈な刺激であることは容易…

1209-1211青森・下北・三沢|つかのまの逍遥

今年2度目の青森。「アオモリオルタナティブ」の景色を見たくなって、秋田ひろむが見てきた世界をなぞりたくて、青森、下北を中心に逍遥した。そして念願だった寺山修司記念館も訪問。 12月の青森とは思えないくらいに穏やかな天候に恵まれ、おかげさまで各…

THE BACK HORN「フロイデ」|押し寄せる歓喜

「世界を撃て」が終わると間髪入れずに押し寄せてくる「フロイデ」。「世界を撃て」から「フロイデ」という流れはあまりにも勢いがあるので、それだけで体温が上昇するような気分になる。それくらいにこの移り変わりは歓声が沸き起こるかのように華やかであ…

THE BACK HORN 「世界を撃て」|颯爽と爪痕を残す眼差し

「裸足の夜明け」を見てから、トラウマとも言えるような裂傷を心に抱いた。 「裸足の夜明け」は初めて行ったTHE BACK HORNのライブである。彼らの結成10周年の記念で、かつ初武道館という晴れ舞台。あの場に立ち会えたことが途轍もない宝物である。 思い起こ…

THE BACK HORN「夕焼けマーチ」|ポップに彩る終焉

このアルバムのあまりの重厚さに11曲しか収録されていないことに驚きつつも、『人間プログラム』が幕を閉じようとしている。 このアルバムを通しで聴くと50分ほどの時間になるようだが、これほどまでに濃密な50分間はTHE BACK HORNだからこそ創出しうる時間…

THE BACK HORN「空、星、海の夜」|光に導かれる者

youtu.be 2枚目のアルバムを『人間プログラム』に決めたのは、「空、星、海の夜」を聴いていたときに「この曲について書きたい」と思ったからである。 あれから随分と時間が経ってしまったけれど、ようやくここまでやってくることができた。いよいよ「空、星…

THE BACK HORN「雨」|世界に色彩が与えられる瞬間について

ライブで聴くことができると、その前奏の佇まいにさめざめとして思わず声をあげそうになる。ライブで聴けたときは意表を突かれてあんぐりを口を開けて立ち尽くしてしまった。ただ、うれしかった。静と動が手を取り合って絶妙な均衡を保つ「雨」。この曲に奪…

THE BACK HORN「アカイヤミ」|瑞々しく禍々しい狂気

耳鳴りのようなキーンという音が耳を劈く、これは開幕の合図だ。 「アカイヤミ」を聴いたとき、この曲には暗闇にも勝る恐ろしさが潜んでいて、暗闇以上に不気味だと思った。「アカイヤミ」を知ったばかりの頃は、この曲がなんだか無性に怖くてあまり聴きたく…

THE BACK HORN「ひょうひょうと」|人間らしい感情の集積が描き出す葛藤

「ひょうひょうと」のひょうひょうとしていないところが好きだ、と言う言葉を聞いたことがある。私も心から同意する。『人間プログラム』のなかでも頭角を現す「ひょうひょうと」は、『BEST THE BACK HORNⅡ』の2枚目に収録する曲をアンケートで募った際に堂…

THE BACK HORN「ミスターワールド」|せめぎ合いから生成される狂おしさの渦

「ミスターワールド」の全体を弓がしなるように伸びやかに鳴り響くベースがとても好きだ。天使の描写を一層感慨深く思うようになったのは、栄純先生の「あいしてぬ」を聴いたからかもしれない。 「あいしてぬ」はeijun名義で作られたラブリーポップの塊がご…

THE BACK HORN 「水槽」|うねりのなかから飛び立つもの

「水槽」という名前からは想像がつかない不穏な空気が漂う前奏。聴いた瞬間「何これ…」と惹きつけられることは必至である。気を抜くと「この前奏ヤバい」としか言えなくなるので気を引き締めていきましょう。 ところで「水槽」という単語から私が連想するの…

THE BACK HORN「8月の秘密」|決壊した感情の深遠さについて

今年も瞬く間に夏が終わった。少し汗ばむ陽気になることもあるが、金木犀の香りを風に乗せた空気はまごうことなく秋のそれで、もう戻らない夏を思うとほんの少し感傷的になる。そんなことを繰り返してばかりいる。きっと秋は夏よりも短いから、夏よりも足早…

THE BACK HORN「サニー」|うねりのなかに見た煌めき

www.youtube.com いつだったかのライブで「サニー」を聴いたときのことなんだけどさ、「大きな手」*1のところで、観客がみんな真顔で手を広げながらおもむろに掲げていて、すごい、異質の風景だった。 興奮気味にそう言ったのは、私の大切な友人だ。たしかに…

まなざしの行方

心配しようにもすべては憶測であり、相手の心情を推し量ってみようにも結局のところ自分の想像の範囲を超えないから、自分との会話になってしまう。相手が感じることも、考えていることも、やっぱりさっぱり判らない。なので、これは、私が勝手ながら烏滸が…

THE BACK HORN 「セレナーデ」|狂喜乱舞するロマンス

セレナーデってドイツ語なんですね。初めて知りました。「セレナーデ」という曲を端的に言い表すならば、甘美で完美、という表現に尽きる。コトバンク先生によると、セレナーデの意味は、「夜、恋人の窓辺などで歌い、または奏でられた愛の歌」のことであり…

09/26雷句誠原画展に行ってきたのだ

『金色のガッシュ!!』は小学生の頃に出会った作品である。私同様に当時のキッズは大半がこの作品にのめり込んだのではないだろうか。週刊連載だったからおそらく2か月に1冊は新刊が出ていたはずなのに、当時は首を長くして発売日を待っていたことを憶えて…

THE BACK HORN「幾千光年の孤独」|いちばんさいしょに教えてくれたこと

完全ランダム、気の向くままに恣意的ピックアップがモットーである。次のアルバムは、どれにしよう、そう思っていたのは半日足らずだったけれど、決定打になったのは、たまたまシャッフルで流れてきた「空、星、海の夜」だった。そのとき「あぁ、この曲につ…

THE BACK HORN「未来」|心が震える瞬間に立ち会うこと

youtu.be 「未来」が主題歌になっている映画があると知ったのは、おそらく大学生になりたての頃。私は逸る気持ちを秘めながら『アカルイミライ』のDVDを借りた。この映画のどこに明るさを感知したらよいのだろう、と思わせるような暗いところが私は好きだ。M…

THE BACK HORN 「ジョーカー」|軌跡を肯定する光と影

わー、「ジョーカー」ですよ、「ジョーカー」。 ライブでのパフォーマンスがとにもかくにも際立つ「ジョーカー」。これを歌い切る生命力に毎回圧倒され、その底なしのエネルギーはどこから沸き上がるのかと不思議に思う。 「ジョーカー」を聴くたびに、悲痛…

THE BACK HORN「赤眼の路上」|静寂と轟音を掌握した凛々しさ

「赤眼の路上」ってどんな路上だろう。赤信号とか、赤いテールランプとか、工事用の赤色灯が照らした路上のことだろうか。 真意はさておき、「赤眼の路上」のなかで描写される凛然とした空気と水月がキリリとしていて何よりも鯔背。静寂を切り裂くように掻き…

THE BACK HORN「羽根~夜空を越えて~」|両面性に宿る引力

聴いた後に込み上げてくるたしかな満足感。深呼吸ともため息とも取れるような深い深い呼吸を感じる。しっとりとしたバラード、遠く響く鈴の音が心地よく、雪が舞う冬に聴きたくなる一曲です。 不器用ながらも誰かを深く想えることは一つの才能である、そう思…

THE BACK HORN「生命線」|生命の律動、世界との紐帯

youtu.be とうとう、「生命線」について述べるときが来ました。「生命線」は私にとって特に思い入れの深い曲です。「もう無理だ」というような局面において、「生命線」には幾度となく救い上げてもらったから今の私が在る、と言っても過言ではありません。だ…

THE BACK HORN「プラトニックファズ」|百面相の表情に匿われた艶

先日、AI画像生成サービスのMidjourneyで遊びまして、その際に「プラトニックファズ」という名前で絵を描いてもらいました。それがこちら。 (出典:Midjourney) 音楽が好きではあるけれど楽器や機材の沼にははまらなかったゆえに、「ファズ」ってエフェク…

THE BACK HORN 「花びら」|心の余白が齎すもの

youtu.be 「幸福な亡骸」の静寂を打ち破るように鳴らされる「花びら」のメロディーは楽し気で、陽気で、でもどことなく悲しみの面影もある。この曲を聴いていて、めくるめく、という言葉が思い浮かんだのは、「花びらが落ちて季節が過ぎて」*1とあるように、…

THE BACK HORN「幸福な亡骸」|鮮やかな色彩を帯びる生と死、揺蕩う夏

本当に本当にほんっっっっっとうに「幸福な亡骸」も傑作ですよね。あああ~~~大好きです~~~この切なさ~~~~搔き乱される情緒~~~~オーノーーー。 というわけで、考えなしに感覚だけで形容すると「大好き、ラブ、やばい」と、ほかにもう何も言えな…

THE BACK HORN 「孤独な戦場」|ギラついた目、生に喰らいつくしぶとさ

来ました、「孤独な戦場」。先日のライブのMCで「岡峰氏「コロナ禍のなか」って同じ意味が繰り返されている表現だよね。山田氏「金を募金しろ」とか?」なんて会話が繰り広げられていた、まさに当該の曲です。 「孤独な戦場」はTHE BACK HORNが手がける秀抜…

THE BACK HORN「光の結晶」|光が凝縮された生命体に伸ばす手

「光の結晶」をアントロギアのツアーで堪能できてご満悦の私です。イントロが掻き鳴らされるたびに、それが何回目かのことであっても、毎回表情が綻んでしまう。 MVで暴れる4人は当たり前だけれど若々しくて、どこか危なげな雰囲気を漂わせていて、それらの…