メメント

両手いっぱいの好きなものについて

2021-01-01から1年間の記事一覧

THE BACK HORN 「舞姫」|THE BACK HORNの歩き方

「舞姫」は『BEST THE BACK HORN』にも収録されている定番曲だ。この曲はいわゆる「THE BACK HORNらしさ」が如実に現れた言葉と音の連続だと思う。日本語の奥ゆかしさを体現し、わびさびなるものを描き出す音の運びがなんとも粋だ。 叙景的な歌詞からは、色…

THE BACK HORN「美しい名前」|銘々の解釈を差し挟むこと

THE BACK HORN全曲レビューをもう一度立て直したいので、いけしゃあしゃあと『THE BACK HORN』の続きを続けます。しゃあしゃあ。 www.youtube.com 「美しい名前」という名前それ自体が美しい。美しいものは数多くあれど、これ以上に美しい主題を私は知らない…

千年続いてほしい話

選ばれないことにほとほと慣れ切った私が、「選ぶ側」の人間になった。他者と会話することは、たしかに面白いことだと思う。何をどんな風に考えているか、どんなものが好きなのか、どういったことに揺さぶられるのか…関わることなく通り過ぎてしまうかもしれ…

ふかふかの食パンを食べたい話

猫の引っ掻き跡みたいな三日月が西の空にぽっかり浮かんでほくそ笑んでいた。澱んだ用水路は夜を纏って、まるで清流であるかのように澄んだ顔をしながら、水面に反射する街灯を装飾品のようにゆらゆら煌めかせていた。僕は青い星を夜空のなかに探しながら、…

自分を甘やかしたい話

事前に心を整えておくと、スッと腑に落ちて、すっくと立ちあがることさえ、できる気がするのだ。たとえそれが、選ばれなかったことを突き付けられた直後だとしても。そうは言っても、落ち込まないわけではない。とにかく自分を甘やかして、なだめているのだ…

冬の面影を名残惜しむ話

「やぁ、もう冬を連れ去ってしまうのかい?」 そう尋ねた僕に夜風はこう言った。 「コンクリートジャングルで通年過ごす君たちには、実にお誂え向きだろう?」 去りゆく冬を名残惜しむ感傷そっちのけで、夜風はカラカラ笑った。 冬が連れ去られて残留した数…