メメント

両手いっぱいの好きなものについて

雑記

情動を灯し続けろ

自分でそう感じているだけだから、〈光〉が私を意図的に追い詰めようとしているわけではもちろんない。ただ、やむにやまれず、そう感じることから抜け出せなかった。これはその記録である。光に追い詰められ、光から逃げた私がもう一度光に向かって進もうと…

【2022年】本当に買ってよかったもの記録

個人的にあまりにも疾風怒涛の2022年がもうすぐ終わる。身の回り品を整理しては購入し、物欲に呑まれながら生活するのが常である。が、徐々に吟味できるようになりつつあるような気がしている。 できるだけ長く使えるものを大切にずっと使いたい、という気持…

1209-1211青森・下北・三沢|つかのまの逍遥

今年2度目の青森。「アオモリオルタナティブ」の景色を見たくなって、秋田ひろむが見てきた世界をなぞりたくて、青森、下北を中心に逍遥した。そして念願だった寺山修司記念館も訪問。 12月の青森とは思えないくらいに穏やかな天候に恵まれ、おかげさまで各…

手当ての話

福利厚生ではない「手当て」の話。 命を支えてもらって、今日を生きることができているのだと、今日も生かしてもらったのだと、日々実感している。突発的に起きたわりに思いのほか長続きする不調に対し、できることはできる範囲で試してみるも、人の数だけ存…

忘れてしまう悲しみについて

あの人に似た無邪気さも後を追うように消失したみたいなんだ。 それからは、打って変わって哀愁が鎮座している。立ち去る様子はない。 気が付くとオリオンが空から消えて、桜はほとんど葉桜になっていた。これは、オリオンと桜を見送ってもなお、未だに咀嚼…

惰弱な精神について

ランダムかつ唐突に落ち込む期間がやってくる。かれこれ思春期からそんな調子だったので恒例行事ではあるのだが。 明滅を繰り返すように切り替わる情緒に絆されることにも漸く慣れてきた気がするけれど、だからと言って涼しい顔でやり過ごせるほど出来た人間…

千年続いてほしい話

選ばれないことにほとほと慣れ切った私が、「選ぶ側」の人間になった。他者と会話することは、たしかに面白いことだと思う。何をどんな風に考えているか、どんなものが好きなのか、どういったことに揺さぶられるのか…関わることなく通り過ぎてしまうかもしれ…

ふかふかの食パンを食べたい話

猫の引っ掻き跡みたいな三日月が西の空にぽっかり浮かんでほくそ笑んでいた。澱んだ用水路は夜を纏って、まるで清流であるかのように澄んだ顔をしながら、水面に反射する街灯を装飾品のようにゆらゆら煌めかせていた。僕は青い星を夜空のなかに探しながら、…

自分を甘やかしたい話

事前に心を整えておくと、スッと腑に落ちて、すっくと立ちあがることさえ、できる気がするのだ。たとえそれが、選ばれなかったことを突き付けられた直後だとしても。そうは言っても、落ち込まないわけではない。とにかく自分を甘やかして、なだめているのだ…

冬の面影を名残惜しむ話

「やぁ、もう冬を連れ去ってしまうのかい?」 そう尋ねた僕に夜風はこう言った。 「コンクリートジャングルで通年過ごす君たちには、実にお誂え向きだろう?」 去りゆく冬を名残惜しむ感傷そっちのけで、夜風はカラカラ笑った。 冬が連れ去られて残留した数…

百行書きたい話

今まで「諦めてきたこと」に想いを馳せる。諦めたと言えるほど、心血を注いだものがなかったことに気付く。辛酸をなめる前に途絶えた点、おそらく線と呼べるほどの軌跡はない点。投げ出して放棄した数々。それらのなかで忘れられずにまだ燻っている意志を、…

光について

3年ほど前に書き残した言葉に触れる機会があった。今思えばそうした言葉の数々も、ちょっとした笑い話にもなっている、とはいえ、当時は辛酸舐めるほかなく、打ちひしがれる日々だった。どこまでいってもあるのは否定、それも自己による、間断なき否定。自分…

よくある空しい話

これはありふれたよくある空しい話。 不定期ではあるのだが、「生きていてはいけない」という確信に襲われることがある。 希死念慮というよりは、或る種の義務が腑に落ちている状態。大した破壊衝動はないから、身体に空いた穴が増えるくらいが関の山だ。本…

花の嵐

気付けば世界は彩に溢れて、目がチカチカする。そんな季節が巡ってきた。風の匂いからもそれは顕著に感じられて、冬が去ることを名残惜しく思う。この冬は、雪に会わずに終わってしまった。 冬に蒔いた数多もの抑鬱が萌芽する春、いつもより幾許か饒舌になる…

世界の美しさについて

始まりを随分遠くに残して、ここまで辿り着いたように思う。 思い返したところで、そこにあるのはよくある生活のよくある日常、それでも、必死になって「私」にしがみついてきた毎日だった。いつの間にか遥か彼方に置き去りにした自分をもう一度抱きしめるた…

体調をくずした話

熱を出すことは滅多にない。特にここ数年、発熱した記憶が一切ない。何らかの体調不良に見舞われることは多少あるのだが、外に出れないなんて事態になることは年に1度くらいである。 こんな具合で、ありがたいことに基本的にはいつも非常に健康なので、突如…

かけがえのない無意味について

私情により、心にぽっかり穴が開いた。ほかでは埋められない代物だ。心に開いた穴はいつだって、代替品で埋まるはずがない。だから、開いた穴はそのままにして、耳に2つ、通算13個目の穴を物理的に開けた。 開いた穴をそのままにして、開けた穴のケアをする…

『断片的なものの社会学』

出会いというのは、何も人とのそれを意味するわけではないことを改めて実感したのは、恥ずかしいことについ最近のことだ。それは音楽、それは読書。ものすごいスピードで私の目の前から過ぎ去っていく人やモノ。それらをたまたま知って、たまたま掬う。そん…

手放せるそのときまで

1月6日。豊川稲荷別院へ足を運んだ。年明け早々、ご縁を断ち切ろうと、目論んで。 思った以上に大きな神社で、大本命の叶稲荷をなかなか見つけられず、友人と彷徨いながら、ようやく辿り着けたのだった。 境内は参拝客で賑わっていたのに、叶稲荷の周りには…

金色に散りばめられた悲しみについて

「黒地に花が舞ったようなイメージ」だと、彼はそう言った。 振り返れば遥か遠く。汗ばむ陽気に、グレーのジャケットを纏って初夏。現実に起こったことであったのか、ひどく現実味が薄くて、訝しいくらいに遠い遠い昔。そうした記憶が奥深くに沈潜しては浮か…