THE BACK HORN
「扉」を聴いたとき、心臓の鼓動をふと感じた。心がときめく、ということ以上に、ドクドクと脈打つ心臓そのものを、命の息吹を、つまり脈動を、この歌から感じ取ったのである。穏やかな曲調とは裏腹に「扉」という歌から想起されるのは、静かなる闘志、命と…
『心臓オーケストラ』の10番目、もとい最後を飾る曲である「ぬくもり歌」。10曲をめぐるアルバムが、この曲とともに幕を下ろす。10曲と耳にすれば、憚らずに言うと物足りなさを覚えそうでもある。が、『心臓オーケストラ』は、物足りなさどころか、痛みを携…
「世界樹の下で」のMVを見る。とても暗い表情をしている3人が頭から離れない。それから、そうした表情からは想像できない情感の発露からも、目が離せない。色々な意味でこの曲に釘付けになってしまうのは、暗澹たる表情を浮かべる彼らを遠くの画面に見据える…
「裸足の夜明け」というライブについては、今後もおそらくことあるごとに言及するだろう。繰り返しにはなるが、「裸足の夜明け」は、私がTHE BACK HORNを初めて見たライブである。 私が「野生の太陽」を初めて聴いたのは「裸足の夜明け」だった。だから、あ…
「ディナー」のあとに耳にする「夕暮れ」は一層の浄化作用を伴う。「純粋になりたかった」と過去形で語られるこの曲の冒頭からは危なげなくらいの純粋さを感じてしまうし、そこには繊細さも傷つきやすさも息衝いている。 何よりも、雪の結晶みたいに透明な声…
「マテリア」に引き続き、さらに深く深く深いところまで潜っていくように濃密な世界が繰り広げられる。「ディナー」がはじまる。未だかつてこの曲をライブで聴いたことはあるだろうか…。記憶の限りでは一度もないような気がする…。 前奏だけ切り取れば、警告…
いろいろあって随分と長い間止まってしまった。久しぶりに書いてみたよ。「マテリア」っていい曲だなア。深く深くため息をつきながら、やはり私はTHE BACK HORNがどうしたって好きなのだと、改めて思えたよ。弁解はこれくらいにしよう。 深呼吸をするような…
なにやら名状しがたい想いが疼いている。言葉にすることは世界を分節するには必要な過程だと思う反面、何でもかんでも言葉にしようと躍起になるのはいささか無粋である。どこからどこまでがそれらの範囲に該当するのだろう。 それはそうと、「夏草の揺れる丘…
音が跳ねるってこういうイメージなのだろうか、と「涙がこぼれたら」をこれまで聴いてきて思う。「涙がこぼれたら」は2002年8月28日にリリースされたTHE BACK HORNの4枚目のシングルである。前作は「世界樹の下で」。こちらは同年5月29日に発売されていて、…
書くときには改めて音源を聴く。繰り返し聴く。そこから言葉を手繰り寄せる。自分のなかに沈潜する言葉を、あるいは芽吹く言葉を。 でも今はなぜか「ゲーム」の対極にあると言えるくらいに穏やかな「ぬくもり歌」を聴いている。なぜだろう。なんだか無性に聴…
THE BACK HORNのアルバムは、収録されている楽曲たちの目覚ましさもさることながら、タイトル名がとにかくどれも異彩を放っている。たとえば『人間プログラム』、『イキルサイノウ』、『ヘッドフォンチルドレン』、そしてもちろん、この『心臓オーケストラ』…
喉が引き裂かれそうになるまで、一心に、幸せであることを希ってくれる人たちがここにいる。これ以上ない幸せが、「泣いている人」という歌には詰まっている。壮大な音のなかにすっくと佇む祈り、希い、慈愛。この一曲のなかには、幸福が漲っている。大仰に…
「さらば、あの日」という歌は、両手いっぱいの切なさを集めて花束にしたみたいな曲だと、ふと思った。 それはきっと花が咲くのを願う描写が差し挟まれているからかもしれない。あまりにも短絡的すぎる発想だけれど、「さらば、あの日」という歌が切なさの集…
「ひとり言」と言うからには、取り留めもなく語られる何かを想像していた。が、このひとり言には「友達」という明確な宛先がある。しかもこれは、おそらく伝えきれなかった、あるいは、伝えられなかった言葉として残留している「ひとり言」である。 そんなふ…
こんなにも暗澹たる「茜空」が存在していることに、私は感動のあまり身震いしている。これは一層強い賞賛を意味する主張であることをあらかじめ断っておきたい。 「茜空」という言葉を耳にするとき、私が真っ先に連想するのは、言葉のとおりに茜色に染まった…
このアルバムと同じ名前を持つ「甦る陽」。この曲は、肩の力が抜けるように、やさしくて朗らかな前奏が印象的である。「甦る陽」を聴いていると、とても穏やかな気持ちに包まれる。飾ることなくこの曲に浸ることができるし、思わず口ずさみたくなるし、音楽…
どの曲もTHE BACK HORNを代表する曲だと高らかに主張したい気持ちがある。このことを前置きがてら語るとしても、「無限の荒野」がTHE BACK HORNを代表する名曲の一つであることは間違いないだろう。 「サーカス」、「走る丘」、そして「新世界」という濃密で…
「リムジンドライブ」は、はちゃめちゃ陽気にポップなのか、はたまたプラス側の極を突き抜けたがゆえの狂的エクストラハイなのか、にわかには判断がつかない楽しい曲である。見事に「脳みそ撒き散らして」*1いる感じが漂っている。やはり、この曲はどこまで…
「新世界」について最も言いたいのはただ一つ。とにもかくにも「自分と世界のバランスとる」*1という一節にこれまで幾度となく救われてきた、ということだ。しかしこれだけで留まるはずもないので、思い巡らすことを改めてここに記したいと思う。 「新世界」…
精神状態や精神の成熟度合いによって歌の響き方はそれぞれ異なると個人的に思っている。これまで繰り返し聴いてきたはずなのに、『甦る陽』が最も響いているのは今この時の自分であることがやけに感慨深く、不思議な面持ちである。 『甦る陽』を聴いていると…
『甦る陽』は2000年にリリースされた2枚目のインディーズアルバムである。2001年にはリミックスされて改めて発売された。現在は2001年に発売されたものが主に流通している。 この作品は若さゆえの刺々しさや荒さが礫になってたまらない魅力を放っている。 若…
滔々と流れるような六弦につつまれる歌。山田将司の声がとにかくよく映える。静かに、訥々と編まれる言葉に込められた祈りに耳を傾ける。 これらの言葉にたしかな重みと想いが宿り、矢が放たれるように聴き手をめがけて一直線に声と音が届く。悠然としたこの…
「罠」はTHE BACK HORNの16枚目のシングルで、ライブでもお馴染みの楽曲である。個人的には、「罠」もどことなく新しい曲というイメージが今もなおある。 しかし「罠」が発売されたのは2007年である。もう15年以上も前のことだという事実に震撼せずにはいら…
かじりつくように歌われるところが印象的な「人間」。歌詞に登場するカタカナが醸し出す雰囲気は、無機質で冷たく、機械的な印象をも与える。指示された言葉をロボットが画一的に出力するみたいに、なぞられた言葉がここでは吐き出されているかのようだ。 情…
ちょっと待って「グラディエーター」ってこんなにかっこよかった!!!!?すごく久しぶりに聴いたけれど、あまりにも鯔背で度肝を抜かれました。 前の曲である「蛍」にすべてを持ってかれて、完全に心ここにあらずのまま「グラディエーター」を聴いていたこ…
「蛍」を聴いたのは、真夏に開催した灼熱のマニアックヘブンが記憶に新しい。あれはたしか2019年のことだ。 マイクをフロアに向かって遠く伸ばす山田将司。たしか、2つ目のサビだった。見事なまでに覚束ないフロアの様子を見てやさしく微笑んでいた山田将司…
マニヘブか通常のライブか記憶が定かでないけれど、「白夜」は結構聴いたことがあると思う。ライブでの「白夜」ってめちゃくちゃ盛り上がりますよね。アップテンポな曲だから盛り上がるわけではないことを「白夜」はいつも気付かせてくれる。あの盛り上がり…
「世界を撃て」、「フロイデ」、「覚醒」、「さざめくハイウェイ」という具合に、ものすごいエネルギーを放つ怒涛の曲順。どの曲も5分以内に収められているとは思えないくらいに濃密な世界が繰り広げられていて、圧巻の一言である。 もちろん、こうした勢い…
なんだかこの曲、すごいマニアックじゃないですか。マニアックヘブンが近づいている時節柄だからそう感じたのかもしれないけれど。 たぶん、どんなライブであっても「さざめくハイウェイ」が差し挟まれたなら、「そうきたか…」と唖然とし、意表を突かれると…
「覚醒」はTHE BACK HORNの17番目のシングルである。この「覚醒」という曲を皮切りに「裸足の夜明け」は開幕した。初めて行くライブの1曲目というのはやけに鮮明に記憶に遺る。それが大好きなバンドのライブであれば、なおのこと強烈な刺激であることは容易…